「雪が降っとるに。」と母が言えばどんなに眠たくても起きる子どもであった。と記憶している。とはいえそれは当人の記憶であり30年も前のこととなっては真偽を確かめることすらできない。けれど雪に反応して飛び起きたという記憶がある。
 今まさにツイッターにこの町で雪が降っていると書き込みがされている。モニターの中で積み重っていく雪という文字が小さい頃に見た雪に覆われた原っぱの光景と重なり合っていく。
 窓からチラリと外の景色を見てみる。この辺りでは雪は降っていないようだ。外に飛び出して確認することもしなかった。となると「雪」と聞いただけで外に飛び出して行った記憶はどうも怪しくも思える。
 小さい頃はよほど純粋な子どもだったのだろうか。そう思うと記憶の中は雪が年々煤けてきているような気がする。