ますの家の鯉

今週のお題「冬のおいしいもの」

 ますの家は岐阜県美濃市にある料理旅館だ。いちおう湯の洞温泉という温泉街にあることになるそうだが山の中にポツンと取り残されたかのような場所にある。湯の洞温泉口駅の案内板だったかには「岐阜市奥座敷として云々」と書かれていたように思う。駅まで迎えに来ていただき車で10分ほど。ますの家の前に立った。
 15年以上前泊まった時に食べた猪鍋と鯉のあらい、翌朝の鯉こくが美味しかった。その味忘れ難く再びやってきたのだ。玄関横の生け簀には大きな鯉がゆるりとその身体を休めている。生け簀の水が味噌汁に見える。
 しかし「2名様のお泊りでは鯉は出せません。大人数でないと鯉はさばきません」という話。仕方なく猪だけに登場いただくことにした。近くの山で捕れたイノシシのいいところを味噌仕立てにした猪鍋は大変美味だった。
 生け簀の鯉を諦め功徳を積んだ。5年経ったけれどいまだに食べそびれた鯉の味が口の中に拡がっている。