お茶

お茶

 祖母が家にやってくると必ずお茶を点てていた。冷蔵庫に仕舞われている銀色の小さな容器から緑色の粉をすくい取りご飯を食べるのとは違う洒落た茶碗に入れる。竹でできた歯ブラシでシャカシャカとかき混ぜできた濃い緑色のものを飲む。大変大雑把な認識ではあったがお抹茶を飲むことが度々あった。
 季節に合わせて茶碗は変えられていた。夏には薄くやや平たい茶碗を用いた。時には冷水で点てることもあった。寒くなれば厚くどっしりとした茶碗を出す。茶碗をお湯で温めてからお茶を点てた。
 一人暮らしを始めた。自分でお茶を点てたりはしなかった。ある時コンビニで売っていた抹茶を買ってみた。ペットボトルの上部に抹茶が詰められそれを押し込んで振るとお茶ができるというものだ。当然ではあるけれど祖母が入れたあのお茶とは別物だった。
 その後このお茶は消え、祖母も亡くなった。結婚もしたけれどお茶を点てることもせず日々だけは続いている。