結婚式

 妹の結婚式に出席した。豪華な披露宴で乾杯の音頭をプロ野球の何樫選手が取り、新聞の号外が撒かれた。
 宴もたけなわ、そろそろお仕舞いかという時に父が手洗いに立った。珍しく多く呑んでいたようなので、単に飲み過ぎだろうと思った。
 直後、「では新郎新婦からご両親へメッセージです」と例のアレの開始を司会者が告げた。しかたない俺の出番だ。「父は感極まり少々席を外しております。私が成り代わりましてお待ち下さいますようお願い申し上げます。」直後に父が戻って来た。
 帰宅してから父はトイレの住民となった。よほどの緊張を強いられていたらしい。母によると、その夜、父は寝ることもできずトイレ通いが朝まで続いた由。息子として38年。あんな姿は初めて見た。
 娘の結婚には恐ろしい魔力が秘められているのかと思うと、俺の時は・・・ちょっと嫉妬を抱いた。娘はもう1人いる。父専用トイレを建てるのが長男の役割なのかもしれない。