深夜バスの中で。

ライター講座課題提出作品。
竹内厚、中村悠介の両氏が講師なって会場は中之島デザインミュージアム de sign de >にて行われています。
8月提出課題は1,200、800または400文字で「気になる事」。
というわけで以下に書き記します。


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深夜バスの中で。
丹羽豊

「カサッ、カサ。カサッ、カサ。」
時刻は午前2時を回っています。静岡駅行き深夜バスの中にいます。カサッカサという音は前の席に座る中学生ぐらいの女の子の荷物から鳴っているようです。気になります。


バスに乗った大阪駅ではこんな音が気になるとは思ってもみませんでした。まず気になったのは閉まっているカーテンでした。夜間に走るバスだから当然のことなのですが、静岡行きのバスは数年前にルートが変更されたはずだと、それが気になっている私はなんとか外を見てルートを確かめてみたかった。同行者に、行き先はこの人の実家なのですが、「窓際に座りたい」とワガママをいい、この席を取ったのでした。カーテンの隙間からそうっと外を眺めると、まだまだバスを待つ人々が停留所にあふれています。田舎者の私はこういう光景を、さすが大阪、都会だよね、と思いながら見るのですが、気になるのは人々が手にしている荷物。コンサート帰りらしくバンド名と思しき文字が入った袋を持つ人達。おそろいのウチワを持っている女の子達はジャジャジャ系アイドルのコンサート帰りなのでしょう。そんな光景を眺めながらバスは定刻に発車しました。
大阪駅を出るとすぐ運転手さんから行程についてアナウンスが入ります。「このバスは静岡駅前行き高速バスです。途中、京田辺・・・(この間20秒)・・・京都でお客様の乗車のため停車します。停車時間は・・・京田辺11時28分・・・京都・・・・・(長いな、あれ言わないの?)」バスがカーブに差し掛かったりするとアナウンスが止まるようで、その間がものすごく気になります。


なんだか気の抜けた感じのアナウンスの最後は私に取って衝撃の一言でした。「ではバス車内を消灯いたします」。なんということでしょう。これではこっそりカーテンを開けたとしても外の灯りがそのまま車内に入り込んでしまうために外を覗く事ができないじゃないですか。確か去年は京都までは消灯していなかったと思うのだけど。いつシステムが変わったのか気になる。


京都を出ると竜王サービスエリアで唯一の休憩停車です。しかし、運転手さんからの発車時間のアナウンスが不明瞭で聞き取れません。彼は20分と言ったのか30分と言ったのか。同行者も分からないと言う。時間を気にしつつさっさとトイレを済ませバスに戻るとなんということでしょう。トイレに行っている隙をみて前席はリクライニングを倒し私の席を狭めているではないですか。がっかりついでに結局発車時刻は30分でした。


そして今、真っ暗な車内で聞こえるのは、前からはカサッカサカサッカサ、後ろからはおじさんのモノとおぼしきイビキがガクーグフ、ガクー。衣擦れの音がサリ、サッ、ガサ。重低音で響くバスの走行音。
いろいろ気にしすぎたけれど、様々な音が聞こえる高速バス車内は実は静かな空間ではないか、そう思った瞬間シーンという音が聞こえ出すではないですか。


気になる。